2023/02/02 『I・Bまちづくりvol.56』に岡本成史弁護士執筆の「地方の不動産開発に朗報?抹消登記が簡略化へ」の記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.56』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「地方の不動産開発に朗報?抹消登記が簡略化へ」という記事が掲載されています。
  
    所有者不明土地の問題解決のための各種法律が2021年4月28日に公布されています。この一環として、相続登記の申請義務化等の不動産登記法(不登法)の改正がされていますが、今回は同法改正による「形骸化した登記の抹消手続の簡略化」についてご紹介します。
 従前の法律の下では、すでにその権利が消滅しているにもかかわらず、登記が抹消されることなく放置されている事案が問題となっていました。たとえば、次のような登記になります。
・買戻し期間が経過している買戻し特約の登記
・存続期間が満了している地上権等の登記
・被担保債権が弁済などにより消滅している担保権の登記
 登記の抹消は登記義務者(担保抹消の場合担保権者)と登記権利者(担保設定者[所有者])の共同申請により行うのが原則ですが、登記義務者が行方不明のために共同申請による登記手続きができず、担保などを抹消できないとなると、登記権利者が不利益を受けます。
 このような場合に、抹消登記手続請求訴訟の判決によって登記権利者のみで登記の単独申請をすることもできますし、不登法では、公示催告の申立てを行い、除権決定を得て単独で登記抹消申請する特例も規定されています。しかしながら、手続的な負担や費用の負担が重く、前記特例などもあまり活用がされていないというのが実情です。
 今回の改正で、次のような抹消手続の簡略化がされます。
① 買戻特約の登記の抹消
 買戻しの特約がされた売買契約の日から10年を経過したときは、登記権利者(売買契約の買主)単独で登記の抹消が可能となります。
② 地上権等の登記の抹消
 登記された存続期間がすでに満了している地上権等の権利に関する登記について、現行制度よりも負担が少ない調査(現地調査不要で、住民票、戸籍等の公的書類等での所在調査で足ります)の結果、登記義務者の所在が判明しないときは、公示催告の申立をして除権決定を得ることにより、登記権利者単独での登記の抹消が可能です。
③ 解散した法人の担保権登記の抹消
 現行法では、登記義務者の所在不明の場合に、被担保債権の弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に被担保債権、利息および債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときにおける登記の抹消についての特例があります。しかし、登記義務者である法人の「所在が知れない」と認められる場合が限定されているうえ、20年前と貨幣価値が大きく異ならない現代において多額の供託金を準備することが困難なこともあります。そこで、解散した法人の担保権に関する登記について、清算人の所在が判明しない(前記の通り公的書類などでの所在調査)場合において、法人の解散後30年が経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年を経過したときは、供託などをしなくとも、登記権利者(土地所有者)が単独でその登記の抹消申請できることになります。
 これらの手続きは本年4月1日から施行されます。物流施設事業や太陽光発発電事業等の地方の土地開発を行う場合に、前記抹消されていない登記に遭遇することがあることから、これらの事業者にとって有効活用できる制度ではないでしょうか。
 
 
 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/61811
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