2022/02/05 『I・Bまちづくりvol.44』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.44』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「パワハラ防止法の中小企業への適用」という記事が掲載されています。
 
 いわゆる「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法の改正)が、2022年4月から中小企業にも適用されます。
  同法は、企業にパワハラの防止措置の義務を課すものです。パワハラによってメンタル不調に陥る人も少なくなく、企業としては人的な損失を被るほか、被害者がネットに書き込むなどのかたちで、企業評価が下がる恐れもあります。加害者だけでなく、企業が直接損害賠償請求をされることもあります。パワハラを防止し、問題が発生しても適切な対応をとることで紛争を拡大させないことは、企業にとって重要なことです。厚労省が定める「パワーハラスメント防止のための指針」では、以下の具体的な対策を挙げていますので、この内容を踏まえた措置を講じましょう。

(1)企業の方針の明確化とその周知・啓発
  ① ハラスメントがあってはならない旨の方針、ハラスメントの行為者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を、就業規則等の文書に規定し、それを労働者に周知・啓発する。
  ② 前記の内容を記載した社内報・パンフレットなどの配布や、周知・啓発のための研修・講習などの実施。

   なお、厚労省のポータルサイト「あかるい職場応援団」には、マニュアルやハンドブック、パンフレット等の資料や社内研修で利用できる資料・動画などが掲載されていますので、適宜利用されるといいでしょう。

 (2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
   ① 相談窓口を設置して労働者に周知すること。
   ② 相談窓口の担当者に、相談を受けた場合の対応についての研修を行うほか、あらかじめ留意点などを記載したマニュアルを作成するなど、相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする。

    なお、相談窓口の設置をしていても、周知できていないことが問題として指摘されています。そのため、事業所でのポスター掲示といった方法などで周知していくことが重要ですし、相談窓口では秘密やプライバシーを守ることも明記しておくことで、相談しやすい環境を整える工夫も必要です。

 (3)事後の迅速かつ適切な対応
   ① 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
   ② 被害を受けた労働者に対する配慮の措置を速やかに、かつ適正に行うこと。
   ③ 加害行為者に対する措置を適正に行うこと。
   ④ 再発防止の措置を講ずること。

 
 (4)併せて講ずべき措置
   ① 音相談者・行為者等のプライバシー保護。
   ② ハラスメント相談を理由とした不利益な取り扱いを禁止し、そのことを周知・啓発すること。

    なお、指針を紹介しましたが、この遵守だけではパワハラを防止できません。パワハラの発生原因としては、コミュニケーション不足や多様性への理解の欠如、業績偏重の評価制度、不適切な作業環境などが挙げられています。従って、指針の遵守と並行して、コミュニケーションをしっかりとる、職場環境を調整するといった対応も必要になってきます。
 

 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/45959
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