2021/11/10 『I・Bまちづくりvol.41』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.41』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「不動産の国庫帰属制度」という記事が掲載されています。
 

 急速な少子高齢化や都市への人口集中などから、田舎の土地について相続を希望せず、あるいは土地を手放したいと考える方は増加している状況にあります。しかし、これまでは土地の所有権を放棄する制度がなく、このことが土地管理の不全化を招いていました。

 そこで、相続または遺贈により土地を取得した所有者が法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を求めることができる制度(相続土地国庫帰属制度)が新設されることになりました。

 ただし、どのような土地でもこの制度を利用できるわけではなく、土地の管理コストを不当に国に転嫁することなどを防止するために、「通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」に該当しないことを国庫帰属の要件にしています。具体的には、次のような土地は国庫帰属の承認はされません。
(1)建物の存する土地
(2)担保権または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地
(3)通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
(4)土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
(5)境界が明らかでない土地その他所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
(6)崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る)がある土地のうち、その通常の管理にあたり過分の費用または労力を要するもの
(7)土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上に存する土地
(8)除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地
(9)隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない土地として政令で定めるもの
(10)上記のほか、通常の管理または処分をするにあたり過分の費用または労力を要する土地として政令で定めるもの
 

  以上の各要件に該当すると、承認申請は認められません。また、承認申請が認められると、10年分の管理に要する費用の納付が必要となり、申請者が管理に要する費用を納付したときに、土地の所有権が国庫に帰属します。なお、現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、粗放的な管理で足りる原野が約20万円、市街地の宅地(200m2)で約80万円とのことです。

 このように、承認要件のハードルが高く、また承認申請時の手数料や承認後の10年分の管理費用など相応の費用が必要になること、申請の内容によっては法務局職員による土地の実地調査に協力しなければならない、などの負担もあります。

 新たな制度ができることで、選択肢が増えることになりますが、土地を手放す方法としては、売却する方法もありますので、処分可能か否かなど十分検討のうえ、土地を手放す方法をご検討ください。


 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/44562
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