2020/07/07 『I・Bまちづくりvol.25』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.25』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「新型コロナ被害と不可抗力」という記事が掲載されています。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大により、原材料の納入が遅れ(あるいは多くの者が感染したため、人員の確保ができず)、その結果、製品製造が遅延し、納期までに納品できないことになった場合などに、納品遅延による損害賠償責任を負うのか、という問題等について,次のとおり解説しています。

 取引に関する問題では、まずは契約書の内容を確認することが重要です。債務不履行の場合に「原因の如何を問わず損害賠償責任を負う」旨の規定があれば、損害賠償責任を免れる可能性は低いことになります。また、不可抗力の場合には責任を負わないという規定が置かれていることもありますし、契約上明確な規定がない場合でも、一般的には「不可抗力」は免責事由と解されています。不可抗力とは、外部から生じ、かつ通常必要と認められる注意や予防方法を尽くしても、なお防止し得ないものか否かが判断されます。

 そこで、今回の新型コロナウイルス感染症は、不可抗力といえるのでしょうか。この問題はコロナウイルスだからという、一律に抽象的に判断されるものではなく、個別具体的な契約関係の諸事情に応じて、判断が異なってくることになります。

 予見が不可能な大地震・洪水などと異なり、今回のウイルスは最初、中国・武漢で発生し、徐々に世界各地に拡大していった経緯があります。この期間に対応できることがあったのではないか――たとえば、感染者が多数発生した結果、納期に間に合わなかったという場合でも、通常必要であると考えられる水準の感染防止策さえ講じない結果、社内で感染が拡大したとか、原材料についてもほかから調達できなかったのか――などの具体的な事実関係から判断されることになります。

 なお、不動産の売買契約を締結して手付金を支払ったが、新型コロナウイルスの拡大による業績悪化などを理由に、売買契約を白紙解約できないかという相談を受けることもあります。このような場合に、解除を認める規定が置かれていることはまずないかと思われますので、時期如何では手付放棄をして解除するしか方法はありません。また、金銭債務の不履行については、民法419条3項において不可抗力をもって抗弁とすることができない(不可抗力を理由に支払わないことを正当化できない)こととなっています。


 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/36557
pagetop