2022/12/01 『I・Bまちづくりvol.54』に岡本成史弁護士執筆の「所有者不明土地の共有制度が見直し」の記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.54』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「所有者不明土地の共有制度が見直し」という記事が掲載されています。
  
 2023年4月1日からは、所有者不明土地の利用に関連する民法の規律の見直しに関する事項が施行されます。相続土地国庫帰属制度は2023年4月27日施行、相続登記の義務化は24年4月1日施行、住所等の変更登記の義務化は26年4月27日までの政令で定める日までに施行(政令は未制定)されることになっています。
 主に、①土地・建物に特化した財産管理制度の創設、②共有制度の見直し、③長期間経過後の遺産分割のルールの3点についての制度となっていますが、今回は②について解説いたします。

 現在、土地など共有となっている財産を利用するためには、下記のようなルールが定められており、所在がわからない共有者がいる場合、売却などが困難となる問題がありました。
共有物の「変更」:共有者全員の同意が必要
共有物の「管理」:各共有者の持分の過半数で決定することが必要
共有物の「保存」:各共有者が単独で行うことができる

 共有状態の解消のため現行法においては、共有者がほかの共有者の持分を取得する方法は、①裁判所の判決により共有物分割、②共有者全員の協議(合意)による共有物分割、③ほかの共有者と協議し、特定の共有者から任意で持分の譲渡を受ける方法がありました。しかし、共有者が所在不明の場合、①はすべての共有者を当事者として訴訟提起しなければならず、共有者が多い場合などには手続き上の負担が大きくなっていました。また、②③は不在者財産管理人の選任を申し立てるなど、手続きがかなり面倒なうえ、不在者財産管理人の報酬などに要する費用負担も問題となっていました。
  改正法においては、共有者は裁判所の決定を得て時価相当額の代金を供託することで、所在等不明共有者(氏名など不特定を含む)の持分を取得することができることとなりました。申立人は、他の共有者を当事者とする必要はありませんので、手続的な負担は軽減されます。他方で、他の共有者は、所定の期間内であれば別途持分取得の裁判を申し立てることが可能であり、このように申立人が複数のケースでは、各申立人がその持分割合に応じて、所在等不明共有者の持分を按分して取得することになります。
 共有持分の売却より不動産全体を売却した方が、受け取る持分割合の代金も高額になることが一般的です。共有物分割請求や前記持分取得制度によっても、所在等不明共有者の持分を他の共有者に移転し、共有物全体を売却することができますが、所在等不明共有者の持分を他の共有者にいったん移転する必要があるほか、登記費用などのコストが余分に必要になります。そこで、裁判所の決定によって、申立てをした共有者に、「所在等不明共有者の不動産の持分を譲渡する権限」を付与する制度が創設されたのです。この制度は、不動産全体を特定の第三者に譲渡するケースでのみ利用可能です。
 このように、共有に関して大幅に改正されたことで、これまで複雑な権利関係のために進められなかった不動産の開発や利用を促進できる案件も増えるのではないでしょうか。
 
 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/60828
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