2022/11/01 『I・Bまちづくりvol.53』に岡本成史弁護士執筆の「建設業・宅建業許可の取消処分」の記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.53』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「建設業・宅建業許可の取消処分」という記事が掲載されています。

  
   令和4年9月、飯田グループホールディングスの連結子会社において、役員が道路交通法違反(スピード違反)で執行猶予付き有罪判決を受けていたものの、会社への報告を怠っていたために、当該役員が有罪判決後も子会社の役員であったこと、宅建業免許および建設業許可を自主廃業する旨のプレスリリースがされました(以下、「本件」といいます)。
 宅建業法では、禁錮以上の刑または宅建業法違反など一定の犯罪で罰金刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者は、宅建業の免許を取得できず、そのような者が役員、政令使用人になっている法人も免許を受けることができない(欠格事由)と規定されています。建設業法でも、同様の事由が許可取得の欠格事由とされています。
 本件のように、実刑ではなく、執行猶予がついている場合でも欠格事由に該当することになります。ただし、執行猶予期間が満了すれば、刑の言い渡しそのものの効力がなくなり、刑に処せられなかったことになりますので、執行猶予期間が満了すれば、5年が経過していなくても、免許・許可を受けられることになります。
 また、本件のように、会社が宅建業免許・建設業許可取得した後に、前記欠格要件に該当してしまった場合、免許・許可の取り消し処分を受けることになります。
 免許・許可が取り消されますと、免許・許可が必要な業務を行えませんので、大打撃を受けることになりますし、また取消処分が公表されますので、イメージの悪化も避けられません。
 そのため、役員が禁錮以上の刑や一定の犯罪での罰金刑の可能性がある犯罪行為で逮捕されるなどした場合には、その時点で当該役員の辞任・解任などによって、当該(元)役員が有罪判決を受けても、刑確定時点では会社の役員ではないので、会社は取消事由の発生を回避できるという対応をとることになります。しかし、本件は、スピード違反ですので、役員も逮捕されることなく、通常通り出社し、会社にも報告していなかったことから、見過ごされていたということではないかと思われます。
 本件では、有罪判決後の発覚日に、役員が辞任しているということですが、このように事後的に欠格要件に該当する役員が辞任(解任)した場合、会社は取消処分を免れることができるでしょうか。この点、宅建業・建設業よりも監督が厳しい産廃業についての通達になりますが、令和3年4月14日「行政処分の指針について」(環循規発第2104141号)は、「いったん欠格要件に該当した以上、仮に法人の役員等がその地位を完全に辞任等したとしても許可を取り消さなければならない」としています。
 そのため、本件では、取消処分を回避するために、先手を打って自主廃業をしたということになります。取消処分というのは、あくまで宅建業者、建設業者に対する処分ですので、自主廃業によって、すでに業者でないものに対し、取り消しはできないからです。
 本件はグループ会社間で融通を利かせることで損失を抑えられたと思われますが、一般的には許認可が取り消される影響は甚大であり、会社の破綻にもつながりかねません。役員が犯罪行為をしても必ずしも逮捕されるとは限りませんので、許認可業務においては、役員が犯罪行為をしたときには、会社に報告することを徹底する必要があります。
 
 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/50115
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