2022/10/13 『I・Bまちづくりvol.52』に岡本成史弁護士執筆の「債務者の財産状況を引き出す『財産開示手続』」の記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.50』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「債務者の財産状況を引き出す『財産開示手続』」という記事が掲載されています。

  
 工事代金・設計料等の債権回収の方法として仮差押さえなどの方法がありますが、相手方が保有する財産がわからずに、強制執行や仮差押さえなどができないこともあります。とくに、多くの時間と費用をかけて訴訟をして、苦労して判決を得ても、差押さえるべき財産がわからなければ、強制執行ができず、それまで要した多額のコストが無駄になってしまうことになります。
 このような場合に取り得る方法として、「財産開示手続」があります。財産開示手続とは、債権者の申立てにより、裁判所が債務者を裁判所に呼び出し、債務者の財産状況を陳述させる手続きです。
    債務者に財産状況を陳述させることで、債権者は、債務者の有する財産等の情報を知ることができ、債務者が陳述した財産の情報を基に、その財産に強制執行できる場合があります。債務者が裁判所に出頭しなかったり、虚偽の陳述をした場合は、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることになりますので、債務者に対して「犯罪として処罰される可能性がある」という大きな心理的圧力をかけることで、より実効性のある制度となっています。
 財産開示手続では、次の①または②に該当することを主張、立証する必要があります。
①強制執行または担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6カ月以上前に終了したものを除く)において、金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得ることができなかったこと
②知れている財産に対する強制執行(担保権の実行)を実施しても、金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得られないこと
 ②を疎明するには、居住地、所在地(本店、支店)等の不動産の調査、預貯金口座の調査、営業内容から通常予想される債権についての調査を実施し、財産がないか、財産があっても債権の完全な弁済を得られないことを疎明する必要があります。
 また、財産開示手続では、債務者から情報を引き出すことになりますが、「第三者からの情報取得手続」として、債務者の財産に関する情報を債務者以外の第三者から提供してもらう手続きもあります。これは、裁判所が金融機関から預貯金情報、証券会社から株式情報、法務局から不動産情報、市区町村や日本年金機構などから勤務先情報の開示を求めることができる手続きです。
 不動産情報、勤務先情報取得の申立てについては、先に財産開示手続を実施していることが要件になります。
 これらの手続きによって、債務者の財産の情報を取得できれば、強制執行により債権の回収ができる場合があります。
 
 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/49749
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