2022/08/04 『I・Bまちづくりvol.50』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.50』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「公益通報者保護法の改正」という記事が掲載されています。

  
  令和4年6月1日から、改正公益通報者保護法が施行されています。
 昨今、情報漏えいや不適切な会計処理、検査偽装、ハラスメントなど、企業の不祥事が報道されることも少なくありません。国民生活の安全・安心を損なうような企業不祥事は、事業者内部の労働者などからの通報をきっかけに明らかになるケースも多くあります。不正の発覚ルートとして、内部通報による発覚が最も多いという調査結果もあります。
 こうした企業不祥事による国民への被害拡大を防止するための通報によって、通報者が解雇等の不利益な取り扱いをされないよう保護されるべきであり、また、事業者にとっても、通報に適切に対応し、リスクの早期把握・自浄作用の向上を図ることで、企業価値・社会的信用を向上させることができます。そこで、公益通報者保護法の改正によって、事業者自らが不正を是正しやすくするとともに、通報者が安心して通報を行いやすく、また保護されやすいものとしました。
 改正の内容は多いですが、従業員の数が300人を超える事業者に対して、①内部通報に適切に対応するための必要な体制の整備と、②「公益通報対応業務従事者」(内部公益通報を受け付け、内部公益通報に関して調査をし、または、その是正措置等を行う担当者)の指定が義務付けられることになりました。この点については、実務上の対応が必要な点になります。なお、従業員の数が300人以下の中小事業者については、努力義務となっています。
 改正前は、内部通報制度などを設けることは法律上の義務とはされておらず、また、事業者に対する制裁も明確でなかったため、十分に機能していないとの指摘がなされていました。今回の改正はこうした指摘を受けてのもので、体制整備が十分でなかったり、「公益通報対応業務従事者」の指定がされていないと、指導や勧告を受けるほか、勧告に従わない場合には社名などを公表されるなどの行政措置を受ける恐れがあります。
 公益通報対応体制の整備のために必要となる措置については、内閣府が指針を示しておりますが、その内容は多岐にわたっていますので簡単にご紹介いたします。
(1)内部公益通報受付窓口の設置等
 公益通報について部門横断的に受け付ける窓口での受付、幹部からの影響力を排した体制づくり、受付案件についての調査、是正措置等の実施
(2)公益通報者を保護する体制の整備
 不利益な取り扱いの禁止や通報者に関する情報の守秘
(3)内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置
 従業員などへの教育・周知、通報者への通知、記録の保管や体制の定期的な見直し、内部規程の策定・運用
 内部通報受付窓口を弁護士などの外部専門家に委託したり、従業員などへの研修を委託するなど、外部専門家の助言などを受けながら、適切な体制の整備が必要になってきます。
 
 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/48735
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