2022/05/01 『I・Bまちづくりvol.47』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.47』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「事業承継ガイドラインの改訂」という記事が掲載されています。

 2022年3月に、中小企業庁から次の4つガイドラインなどが公表されました。
 ① 中小企業の事業再生などに関するガイドライン
 ② 廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方
 ③ 事業承継ガイドラインの改訂
 ④ 中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~
 このうち③の「事業承継ガイドライン」は、2016年度に改訂されてから約5年が経過しています。

 1990年代前半に平均4.7%だった経営者交代率は、その後は長期にわたって低下傾向となり、16年以降の5年間の平均は3.8%となっています。経営者の平均年齢も、90年の54.0歳から一貫して上昇を続け、20年には初めて60歳を超えています。

   一定数の団塊世代の経営者が、事業承継や廃業などによって経営者を引退している一方で、70歳以上の経営者の割合が20年も高まっていること。後継者不在率が改善傾向にある一方で、廃業件数が増加傾向にあることなどから、事業承継の取り組み状況が、二極化しつつあることがうかがえる状況になっています。

 このような経営者の高齢化に歯止めがかからない状況も踏まえて、円滑な事業承継をより一層推進するため、今回、③のガイドラインの改定がされました。更新および追加された内容としては、次のようなものがあります。

・ 法人版事業承継税制、個人版事業承継税制、所在不明株主の整理に係る特例等の支援措置についての詳細な説明
・ 事業承継に関する支援策一覧を別冊として用意

 また、在任期間が長いほど、親族内承継が多いことは従前通りですが、直近5年間では親族内承継の割合が全体の約35%に減少する一方で、親族外承継が65%以上に達しており、今後も、従業員承継(内部昇格)やM&Aの割合が増加傾向にあると予想されています。そのため、次のような点も更新されています。

・ 従業員承継について、事業者ヒアリングなど、後継者の選定・育成プロセス等の内容を充実
・ 第三者承継(M&A)について、20年3月に策定された「中小M&Aガイドライン」等の内容を反映し、充実

 ③のガイドラインの改定と合わせて、中小企業におけるM&A後の統合作業の「型」を取りまとめた④の「中小PMIガイドライン」が新たに策定されています。④は第三者承継(M&A)の譲受側などを想定して策定されていますが、親族内承継や従業員承継の後継者にとっても有用と考えられます。

   後継者を決めてから事業承継が完了するまでの後継者への移行期間は、3年以上を要する割合が半数を上回り、10年以上を要する割合も少なくないとされています。引退年齢を70歳前後とすると、概ね60歳ごろには事業承継に向けた準備を行う必要があります。また、後継者が経営者に就任する年齢は概ね50歳程度である一方で、後継者の多くは40代前半ごろを事業承継の時期として「ちょうど良い」と評価しているというギャップがあり、現状の事業承継の実施時期が、後継者にとっては遅い傾向にあります。

 事業承継によって、企業の売上高や利益が成長する傾向にあるというデータもありますので、事業承継に向けた準備を早めに行うことをお勧めいたします。


 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/47230
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