2021/10/10 『I・Bまちづくりvol.40』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.40』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「所有者不明土地・相続登記の義務化」という記事が掲載されています。
 

 これまで、土地の所有者が死亡して相続が発生しても、相続登記の申請が義務ではなかったことや、都市部への人口移動などにより相続人全員が遠方に居住しているために、誰も土地の相続を希望せず、放置されるケースも少なくありませんでした。しかも、遺産分割をしないまま相続が繰り返されると、土地共有者がねずみ算式に増加して、権利者を確定するのに多大な労力が発生することもありました。このような不動産登記簿から所有者がただちに判明しなかったり、所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地のことを「所有者不明土地」といいます。一説では、全国の「所有者不明土地」の総面積は、九州の面積より広いともいわれています。

 「所有者不明土地」は、土地が管理されずに放置されることが多く、隣接する土地への悪影響が発生するなどの問題がありました。また、所有者の探索に多大な時間と費用が必要であったり、そもそも所有者の所在が不明であることなどから、「公共事業や災害復旧工事などが円滑に進まない」「民間取引が阻害される」など、土地の利活用を阻害していました。

 そこで、「所有者不明土地」の発生予防のための(1)「不動産登記制度の見直し(相続登記の義務化等)」、(2)「土地を手放す制度(相続土地国庫帰属制度)の創設」、(3)「土地利用の円滑化のための制度の導入(土地管理制度の創設など)」を盛り込んだ民法等の改正法が、2021年4月21日に成立し、同月28日公布されました。

 改正法は、不動産を取得した相続人に対し、所有権取得を知った日から3年以内の相続登記申請を義務付け、正当な理由なく申請しないときは10万円の過料に処すとしています。相続登記の義務化は改正法施行前の相続にも適用され、この場合、法施行後3年以内に登記申請が必要になります。

 他方で、これまで相続登記をするにあたって障害とされてきたさまざまな手続き負担を軽減すべく、相続人が、登記名義人の法定相続人である旨を申し出て、登記官が職権でその旨を登記する制度(相続人申告登記制度)が新設されたほか、登録免許税の負担軽減なども検討されています。また、所有不動産の把握を容易にして申請漏れなどを防ぐため、特定の者が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行する制度(所有不動産記録証明制度)も新設されます。

 さらに、同じくこれまで義務とされていなかった登記名義人の住所等変更登記についても、住所等の変更日から2年以内の変更登記申請が義務付けられ、正当な理由のない申請漏れには5万円以下の過料の罰則があります。他方で、住民基本台帳ネットワークシステムや法人・商業登記システムとの連携により、登記官が、職権で変更登記をする新たな方策も導入されることになっています。



 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/44000
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