2021/08/10 『I・Bまちづくりvol.38』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.38』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「同一労働同一賃金、個別の処遇は?」という記事が掲載されています。
 
 同一労働同一賃金、個別の処遇について検討しています。

(1)通勤手当
 正社員には通勤手当を支給するが、パート・有期労働者には支給しないというのは、問題ないでしょうか。
 通勤手当を、職場に来てもらうために必要な交通費として支給している場合、通勤手当の「性質・目的」は、通勤にかかった費用を補てんすることです。つまり「職務の内容」や、転勤や異動の有無・範囲(職務の内容・配置の変更の範囲)といった事情は、通勤手当の支給の有無や支払いの仕方には、あまり関係ないことがわかります。そのため、「その他の事情」がなければ、通勤手当についてパート・有期労働者に支給しないことは「不合理ではない」とはいえず、改善に向けた取り組みが必要です。
 ただし、所定労働日数が多い正社員などには、月額の定期券に相当する額を支給しているけれど、所定労働日数が少ない、または出勤日数が変動するパート・有期労働者には、日額の交通費に相当する額を支給しているといったケースは、「不合理ではない」といえるのではないでしょうか。

(2)役職手当
 主任や店長など、一定の役職に就いている正社員には役職手当が支払われているが、パート・有期労働者には支給しないというのは問題でしょうか。
 役職手当の「性質・目的」を、役職に就く者としての責任の重さを評価して支給すると考えた場合、社員の「業務の内容」や「責任の程度」が、役職手当の支給の有無や支払いの仕方に影響をおよぼすものと考えられます。そうしますと、一定の役職に就いている正社員には役職手当を支給するが、対象役職に就くことが想定されないパート・有期労働者に支給なしとしても「不合理ではない」と考えられます。ただし、正社員の役職と同一の役職で同一の職務を行うパート・有期労働者に役職手当を支給しないとか、正社員よりも低額の手当しか支給しないというのは、問題になり得ます。

(3)皆勤手当
 皆勤手当を正社員には支給しているが、パート・有期労働者には支給していないことは、問題になるでしょうか。
 皆勤手当の「性質・目的」が、たとえば運転業務などで出勤ドライバー数を確保するために皆勤を奨励するという場合、ドライバーという「業務の内容」が皆勤手当の支給の有無に影響をおよぼすものと考えられます。そうしますと、正社員とパート・有期労働者が同じ「業務の内容」である場合に、パート・有期労働者に皆勤手当を支給しないのは「不合理ではない」とはいえず、改善が必要であると考えられます。
 他方で、欠勤についてマイナス査定を行い、これを待遇に反映する正社員には、一定の日数以上出勤した場合に精皆勤手当を支給しているが、欠勤についてのマイナス査定の考課を行っていないパート・有期労働者には、その見合いの範囲内で精皆勤手当を支給していないことは、「不合理ではない」といえるでしょう。



 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/43103
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