2021/07/10 『I・Bまちづくりvol.37』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.37』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「同一労働同一賃金、社内での点検・検討基準は?」という記事が掲載されています。
 
 「同一労働同一賃金」に合致した社内の制度の点検を行う必要があることから、具体的に検討・点検の基準について、解説しています。

 まず、パート・有期労働者を雇用されている場合に、正社員と「職務の内容」および「職務の内容・配置の変更の範囲」が同じパート・有期労働者がいるかを確認します。具体的には、次の点を順番に検討し、正社員とパート・有期労働者とが「同じ」か「異なる」かを確認していきます。

(1)職務の内容
 a 業務の内容
  i 業務の種類(職種)
   販売職、管理職、事務職、製造工、印刷工などといった従事する業務のこと
  ii 従事している業務のうち中核的な業務
   職種を構成する業務のうち、その職種を代表する中核的なもの、職種に不可欠な業務のこと。たとえば、キッチンスタッフという職種における調理、メニュー作成など
 b 当該業務にともなう「責任の程度」
  業務上の権限の範囲・程度等のことであり、たとえば、 単独で決裁できる金額の範囲、管理する部下の人数、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応、売上目標などの成果への期待度など
(2)職務の内容・配置の変更の範囲
 転勤、昇進などの人事異動や本人の役割の変化など(職務内容の変更を含む)の有無や範囲のこと

   たとえば、同じキッチンスタッフという職種でも、パート・有期労働者は調理業務のみを行い、正社員はこれに加えてメニュー作成や人材育成も業務である場合は、前記iiが異なることになりますし、中核的業務まで同じでも、正社員は急な欠勤者が出た場合の対応を求められるが、パート・有期労働者は求められないという場合には、bが異なることになります。また、bまで同じでも、正社員は転居をともなうような場所にある店舗への異動もあるが、パート・有期労働者は自宅から通える範囲での異動に限られる場合は、(2)が異なることになります。

 正社員とパート・有期労働者とで、(1)(2)が同じ場合は、均等待遇の対象となり、パート・有期労働者の待遇も正社員と同じ方法で決定する必要があります。それ以外の場合は、均衡待遇(不合理な待遇差別禁止)が求められますので、各待遇の「適用の有無」あるいは「決定基準」に「違い」がある場合には、それが不合理か否かを検討することになります。この場合、次の手順で検討することになります。

 a 各待遇の「性質・目的」を確認・整理
  なぜ、その待遇を設けたのか、その待遇を労働者に支給・付与することにより、どのような効果を期待しているかといった待遇の「性質・目的」の内容を明らかにする

 b 待遇の「性質・目的」を踏まえて、待遇に関連する考慮要素のどれに該当するかを判断
  考慮要素は、前記(1)職務の内容、(2)職務の内容・配置の変更の範囲に加えて、(3)「その他の事情」(成果、能力、経験、合理的な労使慣行労使交渉の経緯などが想定される)です。
 c その考慮要素に基づき、「違い」を適切に説明できるかを検討


 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/42670
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