2021/06/15 『I・Bまちづくりvol.36』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.36』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「中小企業も適用開始『同一労働同一賃金』」という記事が掲載されています。
 

 同一企業内における正社員(無期雇用フルタイム労働者)とパートタイム・有期雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくすことを目的とする「パートタイム・有期雇用労働法」が2020年4月1日に施行されていますが、2021年4月1日から中小企業にも適用されるようになっています。

 この法律は、同じ企業で働く正社員と短時間・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当、福利厚生などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることを禁止しています(いわゆる「同一労働同一賃金」)。具体的には、短時間・有期雇用労働者と正社員との間で、
 (1)「職務内容(業務の内容+責任の程度)」
 (2)「職務内容・配置の変更範囲(転勤、人事異動、昇進などの有無や範囲)」
が同じ場合は、すべての待遇について、差別的に取り扱うことが禁止され(均等待遇)、また、短時間・有期雇用労働者と正社員との間で、(1)(2)および、
 (3)「その他の事情」の違いに応じた範囲内で、待遇を決定する必要(不合理な待遇差の禁止)があること(均衡待遇)を定めています。

 また、事業主は、短時間・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は、この点についての説明をしなければなりません。

 そのため、企業の対応としては、自社の状況が法の内容に沿ったものか、社内の制度の点検を行う必要があります。具体的には、短時間・有期雇用労働者を雇用されている場合に、まず正社員との待遇の違いがあるかを検討し、待遇に違いがある場合は、待遇の違いが働き方や役割の違いに応じたものであると説明できるのか、検討することになります。単に「パートだから」「将来の役割についての期待が異なるため」という主観的・抽象的理由では、待遇の違いについての説明ができているとはいえません。待遇差についての合理的な説明が可能な場合は、労働者から説明を求められたときに、待遇の違いの内容や不合理な待遇差ではない理由について説明できるように整理しておくことが重要です。

 逆に、合理的な説明ができないものについては、待遇の違いが不合理であり、違法と判断される可能性がありますので、不合理な待遇の違いの改善に向けた取り組みを進めることが必要です。なお、基本給や賞与、役職手当、食事手当などの諸手当、福利厚生、教育訓練などの個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して、不合理な待遇差か否かを判断することになります。


 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/42129
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