2021/05/15 『I・Bまちづくりvol.35』に岡本成史弁護士の執筆記事が掲載されました。

 ㈱データ・マックス発刊の『I・Bまちづくりvol.35』の「建設・不動産業界 法律相談 弁護士が語る知っておきたいトラブル予防」のコーナーに,「70歳までの就業機会確保に向けた事業主の努力義務とは」という記事が掲載されています。
 

2021年4月から改正高年齢者雇用安定法(以下、高年法)が施行され、事業主は70歳までの就業機会確保に向けた体制整備が求められます。

 改正前の高年法では、65歳までの雇用確保を義務づけていました。具体的には、次のいずれかの措置を講じなければいけませんでした。

(1)65歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入

   今回の改正は、65歳までの雇用確保義務に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、次のいずれかの措置を講ずる「努力義務」を新設しました。

(1)70歳までの定年引き上げ
(2)定年制の廃止
(3)70歳までの継続雇用制度の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

   (4)と(5)は雇用ではないため、改正では「雇用確保措置」ではなく「就業確保措置」となっています。ただし、(4)(5)は導入に際して過半数労働組合等の同意が必要なこと、社会貢献事業に該当するかどうかの判断が難しいことなど課題は多く、現実的には(1)~(3)の「雇用」で対応する企業が大半を占めることになると思われます。

 また、65歳までの継続雇用では、自社や子会社、親会社等の関連法人などで継続雇用する必要がありますが、65歳以降の継続雇用では、そのような関係にない法人で継続雇用する制度も可能になります。

 今回の改正では、「65歳」までの継続雇用を導入したばかりの企業も多いなかで「70歳」までの延長を「義務」とするのは時期尚早であるという観点から、「努力義務」にとどめられています。

 しかしながら、努力義務というのは、何もしなくても良いわけではなく、(1)~(5)のどの措置を導入するか検討し、労使の協議を継続するなどの対応は求められます。また、「まずは67歳までの制度を導入する」など段階的に進めていくことは可能ですが、67歳までの制度で止まっていると、努力義務を満たしているとはいえません。70歳までの制度を導入することに努め続けることが必要です。

 なお、努力義務ですので、違反しても罰則はありません。ただし、ハローワーク等の指導・助言の対象となる場合があり、指導などを行っても状況が改善していない場合には、措置実施の計画作成を勧告される場合などがあります。そのため、真摯に対応を進めていくことが望ましいといえます。


 『I・Bまちづくり』は,九州の建設・不動産業界に焦点を当てた情報誌であり,九州で注目の再開発や熊本の復興状況、地方の魅力あるエリア、注目サービスや注目企業を取り上げています。
 
 なお,執筆した記事の内容は㈱データ・マックスのサイトにも掲載されています。
   https://www.data-max.co.jp/article/41556
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